酸蝕症をご存じですか?

平成28年8月29日(月) 掲載

健康のために、黒酢を飲んだり、柑橘類や生野菜を取ったり・・・と、体にいろいろ気を使っている方は多いのではないでしょうか。

 地元・東三河は、みかんの産地としても有名ですが、そんなある日、「庭で取れた夏ミカンを体に良いから、時期には毎日1個は食べている」という患者さんが、歯がしみるとおっしゃって来院されました。
 患者さんの歯は、ムシ歯でもないのに、何かに溶けて小さくなっていまました。

<歯の表面のエナメル質が溶けて、一部えぐれたようにへこみ、象牙質が黄色く見えています>
 体には良い物でもあっても、歯をボロボロにしてしまうことをご存じでしたか?
 「酸蝕症」は、酸の強い飲食物を摂る機会が増えると、知らないうちに歯の表面のエナメル質が溶けてしまたり、噛むことで酸によって弱くなった歯が擦り減った歯のことを言います。
 エナメル質が溶けるくると、象牙質が透けて黄色く見え、前歯などは見映えがわるくなったり、ひどい知覚過敏を起こしたりします。
 酸性が強いものには、柑橘類・清涼飲料・ドレッシング・ビタミンC剤などのサプリメント・クエン酸・食酢・果実酒などが挙げられます。
 食品の中には、酸っぱいけどアルカリ性食品がたくさんあります。その代表格が「梅干し」です。梅干しの酸っぱさはクエン酸に由来していますので、体には良い食べ物ですが、歯にとっては注意が必要です。
 健康ブームの以外な落とし穴が、摂取方法を誤ると、「酸蝕症」となって、口の中に現れます。

 人の歯は、PH5.5くらいで、溶けはじめます。
 次に掲げる食品のPHです。参考にして下さい。
 清涼飲料・・・乳幼児用イオン飲料PH4.1 ビールPH3.8
 コーラPH2.5 オレンジジュースPH3.8
 かんきつ類・・レモンPH2 オレンジPH2.8~4.0
 パイナップルPH3.3~4.1
 各飲料・・・・黒酢PH3.1  栄養ドリンクPH2.9
 スポーツドリンクPH3.5
 この他にも、ワイン、リンゴ酢、オーラルケア用うがい薬。

 では、「酸蝕症」をどう予防すればいいのでしょうか?
 酸の強い食品を口にしたら、必ず中和することをお勧めします。
 お茶は、アルカリ性飲料でフッ素が含まれていますので、お口の中を中和して、歯の表面も強くしてくれる強い味方です。乳製品もお口の中をアルカリ性に傾けてくれます。
 ワインなどを楽しんだ後や酸っぱい物を口にした後は、これらでお口の中を中和して、しばらくたってから歯磨きをするようにしてください。
 酸に触れた歯の表面は、柔らかくなっていますので、硬いブラシと歯磨き粉の使用はやめて、やわらかい歯ブラシで優しく磨いてください。
 ちょっと、工夫をすれば、歯も痛めないで、大好きな酸性の強い食べ物も上手に摂ることができます。