タバコは歯周病を悪化させる

平成29年5月15日(月) 掲載

現在、世界中で年間500万人以上がタバコに起因する病気で死亡しています。  
 2030年までには、喫煙が死亡および障害発生原因の第1位を占め、年間1000 万人以上が死亡することになるであろうと予測されています。
 喫煙者は非喫煙者に比べさまざまな病気に罹りやすく、がん疾患(肺がん、胃がん、咽頭がんなど)、心筋梗塞、クモ膜下出血、慢性閉塞性肺疾患など、妊産婦においても低出生体重児や流産、早産、死産を誘因します。
 また、喫煙によって引き起こされる脳血流の低下や脳血管障害による死亡も多くなります。
 そして、口はタバコの煙が出入りする最初の臓器です。
 全身的な影響と直接暴露により多くの組織が刺激・破壊され、さまざまな疾患が生じる原因となります。
 とりわけ歯周病においては、発症・進行・治療において悪影響を及ぼし、喫煙者の口の中は不健康な外観を呈しています。
 歯グキはメラニン色素により黒色化し、硬くごつごつしてきて、絶えず不快な口臭を漂わせ、歯面にはタールが「ヤニ」として沈着します。
 科学物質の影響や温熱刺激により、味覚を感じる舌の機能が低下し、味覚が鈍麻してきます。
 また、歯周病に罹患する可能性が高くなり、非喫煙者に比べ2~8倍の危険度で歯周病に罹りやすいと言われています。
 喫煙者では、歯周病が進行しても歯グキの炎症症状が表立って現れにくく、タバコに含まれる化学物質の作用で歯グキからの出血を減少させ、歯グキの表面を硬化させることにより、症状を隠してしまい、そのため初期症状の発見が遅れ、治療が手遅れになる可能性があります。
 喫煙が口の中に及ぼす主な影響をまとめると、次の用になります。
・ニコチンによる血管収縮の作用により、歯周組織(歯を支える周囲組織)の血流が悪くなり、歯周組織が栄養失調状態になります
・一酸化炭素により歯周組織への酸素供給が不足状態になります
・全身の免疫力が衰え、歯周病への抵抗力が低下します
・血中ビタミンCが破壊され、全身的に殺菌作用が低下します ・歯周組織を再生させる細胞の増殖が抑制されます
・唾液の分泌が減少し、細菌の繁殖を抑える作用が減退します  
 また、タバコは病気の原因のなかで「予防できる最大で単一の原因」であり、喫煙関連疾患の予防と治療には、禁煙が非常に重要であるといわれています。
 歯周病においても、禁煙はリスクを確実に低下させ、治癒も早くなります。  喫煙者の方へは、歯周病だけのためではなく、全身的な健康のためにも一日も早い禁煙をお勧めします。
 歯垢をためない正しい磨き方を心がけ、かかりつけの歯科医院で定期的な健診や「歯のクリーニング」を受けることを勧めます。