最近、食事の時間が長くなり、食事中もむせることがあります。どうしてですか?

平成26年8月25日(月) 東愛知新聞掲載

日本人の平均的な食事の時間は約1食約30分で70歳以上の方で若干長く1食約37分程度といわれています。
まず食事の時間が長くなる原因を大きく分けてみましょう。  
1)食べ物が咬めない、咬みにくい。
①歯の問題
 まず虫歯で歯が欠けている・または歯周病にて歯が抜けていてそのままになっているなど、歯が一部でも無くなった場合、同じものを咬むのでも回数が多くなり、結果的に食事時間に影響が出てきます。
②咬む力が衰えている
   咬むときに使う筋肉(咀嚼筋)の力が衰えてくると硬いものが咬みにくく、食事時間に影響してきます。  

2)食べ物を飲み込めない。
①唾液が少ない
   唾液は食物を咬むことにより食物と混ざり潤滑剤の役目をします。人はある程度年齢を重ねてくると唾液が減ってくる傾向にあります。また高血圧等に対して先生から処方される降圧剤等の薬でも副作用で唾液が減る事があります。そのため潤滑が悪くなり飲み込みに影響してきます。
②飲み込む(嚥下)機能の異常
 お口に入った食物は複雑な筋肉の作用で喉を通って食道をつたって胃に運ばれていきます。これを嚥下といいますが、嚥下作用のどこかで異常があると食物が運ばれにくい状態になります。ここでも食事時間に影響してきます。  

次に食事中のむせについて説明しましょう。むせの原因は、食べ物を飲み込む際に、食物が誤って気管に入ってしまう事から生じます。
 お口に入った食物は喉を通って食道の入り口に入り胃へと運ばれます。喉にある食道の入り口のすぐ前側には呼吸をするための気管の入り口(咽頭)があります。咽頭は普段呼吸をしている時は開いていますが、嚥下時は閉じていて食物が誤って流れ込まないようになっています。
 しかし、この嚥下がうまく働かない場合があると、咽頭が閉じるタイミングがずれたり完全に閉じなかったりする事があり、飲食物が気管に入ってしまいます。
 これを誤嚥といいますが、このまま飲食物が気管をつたって肺に入ると肺炎を起こす(これを誤嚥性肺炎といいます)危険があるため、気管に入った食物等を吐き出そうとして咳き込みが起こります。これが「むせ」になります。

食事の時間が長くなり、むせが出てきているとの事ですが誤嚥性肺炎の疑いもありますので一度かかりつけの内科や歯科にて相談されてみてはいかがでしょうか。