命にかかわる口の中の病気ってありますか?

平成27年4月20日(月) 東愛知新聞掲載

命にかかわる口の中の病気としては口腔癌(こうくうがん)があります。口腔癌は口腔内できる癌を言い、舌癌(ぜつがん)、舌と歯ぐきとの間にできる口腔底癌(こうくうていがん)、歯肉癌(しにくがん)、頬粘膜癌(きょうねんまくがん)、上あごにできる硬口蓋癌(こうこうがいがん)、口唇癌(こうしんがん)があります。
 日本では口腔癌の大部分が舌癌で、口腔底癌、歯肉癌の順で多く見られます。 原因としては、口腔内の不衛生、喫煙、飲酒などが危険因子としてあげられます。
 症状の現れ方としては口腔内の痛みです。口腔底では口内炎と間違えられることが多いです。歯肉癌では歯周病、齲蝕(うしょく)(虫歯のこと)による痛みと間違えられることがあります。初めは、しみたり違和感がありますが、進行すると痛みが著しくなり、潰瘍(かいよう)や腫瘤(しゅりゅう)を形成します。
 口腔内の診察と触診が大切です。専門医による視診、触診が重要であり、疑わしい所見があれば細胞診や生検を行います。また、歯肉癌においてはエックス線撮影による診断が有効です。

 他に命にかかわる口の中の病気としては歯周病(ししゅうびょう)があります。歯周病は口の中の病気にすぎないと思われがちですが、全身のさまざまな病気に悪影響を及ぼし、命にもかかわることがわかってきました。
 歯周病の原因となる歯周病菌は歯と歯ぐきの間の歯周ポケットで増殖して炎症を起こし、血液に入り込みます。歯周病菌の1種が血管の内側に付着してコレステロールなどを集め、動脈硬化を引き起こします。さらに別の歯周病菌の1種が動脈硬化した組織を傷つけ血栓を作ります。この血栓が心臓の血管を詰まらせることで心筋梗塞を引き起こします。
 また、糖尿病患者の多くは歯周病を患っています。糖尿病は命にかかわる病気であり歯周病と密接な関係があります。
 歯周病になると歯ぐきが炎症を起こすため、体内で炎症を抑える働きのある物質が作られます。この物質は、血糖値をコントロールするインスリンの働きも抑える作用があります。その結果血糖値が下がらず、糖尿病が悪化してしまうのです。
 また、齲蝕になっても歯医者に行く時間がないからといって放置していると、症状が悪化し歯から入った細菌が血液中や呼吸器内などにまで入り込み、心筋梗塞や動脈硬化、肺炎、敗血症といった命にかかわる病気を引き起こす恐れもあります。

 以上の事からも定期的な口腔内診査をする必要性があると思います。