心臓病と歯周病の関係

平成27年8月10日(月) 東愛知新聞掲載

心臓を動かしている筋肉を心筋といいます。
 そして、そこに酸素や栄養を送っている血管のことを冠動脈をといいます。
 この冠動脈から酸素や心臓の栄養素である血液が心筋に送り込まれると、心臓は正常に働いて、健康な生活を送ることができる訳です。
 しかし、心臓の栄養素である血液の量が減少して、貧血状態になると、心筋が懐死しはじめて、心筋梗塞を起こします。
 また、心臓に栄養素である血液を送る冠動脈が動脈硬化(血管が何らかの因子で詰まることです)を起こして、血管が狭くなり、心臓に送られる血液量が減少しても、心筋が懐死には至らない状態を狭心症といいます。
 こうした心臓疾患は、世界中のほとんどの国で、死亡原因の上位を占めています。
 心筋梗塞や狭心症の原因とされる動脈硬化は、高血圧症、高脂血症、糖尿病などの疾病や、その他にもヘビースモーカーの方などは全身の血管に動脈硬化を起こしやすいといわれています。
 歯科領域に目を向けると、「歯周病にかかっている人の方が心筋梗塞になりやすい」という報告があります。
 「歯から心臓疾患になるの?」と、疑いたくなるような報告ですが事実です。
 歯周病は、歯周病菌という細菌による細菌感染症です。
 歯と歯グキのすき間のことを歯周ポケットと言いますが、その歯周ポケットの中には、400~500種類もの細菌がいると言われます。
 そのうちの10種類ほどが強い病原性を持っています。
 この細菌は、歯グキの中に入り込む能力があり、さらに歯周病が進行すると歯周ポケットの内側に潰瘍ができて歯グキがただれ、そこから細菌が血液に紛れ込んで、血管を通って体の中に入り込みます。
 血液の流れに乗って流れ込んだ細菌は、冠動脈まで到達し、血管の細胞(内皮細胞)の中に入り込みます
 実際、動脈硬化を起こしている場所から、歯周病菌が見つかっています。
 また、心筋梗塞の時には、血液中にCRPという物質が増加します。  CRPは体のどこかに炎症がある時に、肝臓で作られる急性期タンパクと呼ばれるものです。CRPの値が高い人は心筋梗塞の発作を再発しやすく、死亡率が高いことが判っています。
 CRPは歯周病の方でも、健康な人に比べると高く値を示しますが、確実に歯周病の治療を行うと健康な人と同じレベルまで下げることができます。
 つまり、歯周病を放っておけば、心筋梗塞を引き起こすリスクが高くなることが判りますし、歯周病を確実に治療することで、心筋梗塞・狭心症といった心臓疾患を予防することになります。
 歯グキを触ると痛い、出血した、歯が揺れている、噛めない、朝起きると口が臭い、スッキリしないなどの歯周病のシグナル(症状)は、心臓疾患への警告シグナルかもしれません。