歯周病の危険信号

平成27年11月23日(月) 東愛知新聞掲載

健康診断で高血糖、高血圧、高脂血症、肥満などを指摘されたことのある方は多いと思いますが、異常の程度は軽くても、これらがお互いからみあって糖尿病や心臓病などの生活習慣病のリスクを何倍にも高めていますが、そのメカニズムに歯周病が大きく関わっていることをご存じでしたか?  
 歯周病はムシ歯と違って、歯そのものの病気ではありません。歯を支えている周りの組織(歯グキ・歯槽骨・歯と歯槽骨を結んでいる歯根膜)の病気です。  
 昔は「歯槽膿漏(しそうのうろう)」と言われていました。  
 歯グキのみに炎症が生じている「歯肉炎」と、歯グキから歯槽骨、歯根膜に炎症が波及している「歯周炎」を総称して『歯周病』と呼んでいます。
 軽度なものから重度のものまで、日本人の8割以上が歯周病と言われています。  
 歯周病の初期の段階は「歯肉炎」といいます。  「歯肉炎」の原因は、歯の表面に付いた細菌の集団であるプラーク(歯垢)です。このプラーク耳かき1杯分で何億という細菌が存在します。  
 ムシ歯は歯に穴が開いたり、水が凍みる、痛い、腫れるなどの症状が現れてきますが、歯周病は自覚症状がほとんどありません。多くの場合は、知らないうちに歯周病になってしまうケースが殆どです。  
 時間の経過と共に、歯と歯グキのすき間(歯周ポケット)が深くなり、細菌がそこに入り込んで炎症がひどくなり、やがて歯グキの下にある歯槽骨(歯を支えているあごの骨)が破壊され、歯はぐらぐらし始めて、最後には歯が抜け落ちてしまいます。  
 歯周病は、早期発見・早期治療が大原則です。 痛くないから自分では大丈夫だと思っていても、前述したように歯周病は知らないうちに症状が進行してしまう病気です。  
 もし、次のような症状があったら「要注意!!」。歯周病の危険信号です。  
 症状の軽い順に、①歯を磨くと歯グキから出血する②口臭がある(人から言われたことがある)③歯と歯の間によく物が挟まる④朝起きた時、口の中がねばついて不快である⑤歯グキがムズムズしてかゆい⑥歯グキが充血して赤い⑦歯グキが痛くて、歯が浮いた感じがする⑧歯が以前より長くなったように見える⑨歯グキを押さえると血や臭い膿が出てくる⑩水を飲むと歯の根本がしみる(知覚過敏)⑪歯を手で押すとがぐらぐらする感じがある⑫歯がぐらぐらして食べ物がうまくかみ切れないなどがあります。  
 また、日頃の生活習慣において、①喫煙(生活習慣では最大の危険因子)②多量の飲酒(骨密度を低下させる)③精神的ストレス(免疫系に影響)④偏った食生活(全身の健康に悪影響)など、影響があると言われています。  
 どうですか?思い当たる項目がありましたか?
「生まれつき歯が弱いから」とか、「年をとれば入れ歯になるから」とあきらめモードに入っていませんか?「そんなに歯ばかり磨く時間がない」、「甘い物だって食べたい」と嘆いたことってありませんか?  
 まずは、自分の口の中や生活習慣の「危険度」を歯科健診などで認識して下さい。  
 「歯磨きをしていれば歯周病を完全に予防できるのか?」と言えばそうではありません。磨き方が上手くなければ、プラークは落とすことができません。「磨いた」、「磨けた」の差が大きな違いとなって口の中に現れます。
 歯磨きのコツさえ覚えれば歯を守ることは、難しいことではありません。 また、プラークが石灰化してできてしまった歯石は歯磨きでは取ることができません。かかりつけの歯科医院で取ってもらえば、軽い歯肉炎の段階なら歯石の除去だけで治ることがあります。  
 歯周病の治療と予防は、家庭でのケア(ブラッシングと正しい生活習慣)が、あなた自身でできる最高の治療方法であり、最善の予防方法です。