口腔カンジダ症

平成28年1月4日(月) 掲載

口腔カンジダ症は、口の中に存在するカンジダ菌という真菌によって、主に小斑点状のコケ(苔)のようなものが出来る病気です。
 カンジダに属する真菌は約100種類の菌種が知られていますが、そのうちカンジダ症として人に病気を及ぼすカンジダ菌はカンジダ・アルビカンスという真菌(カビ)です。
 この菌は口の中に存在する菌でも病原性に乏しく、健康人にカンジダ症が発症することはきわめてまれです。
 一般的に発症を誘因する病気には、悪性腫瘍(放射線治療や抗がん剤治療)、血液疾患、免疫不全症、結核および糖尿病などの基礎疾患の存在があげられますが、このような疾患を持たない場合は、乳幼児、高齢者、妊婦などの体力や抵抗力(免疫・感染防御機能)の弱い人がほとんどです。
 また、ステロイド剤、真菌剤、抗生物質の長期服用した場合など、口の中に存在する細菌のバランスが崩れ、しばしば菌交代現象により発症することがあります。
 近年では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の付随疾患としても注目されています。
 歯科領域では、だ液が少なくなったり、義歯の入れっぱなし、清掃状態不良によって起こることがあります。
 皮膚や口の中の粘膜をできる表在性カンジダ症と、消化管・気管・気管支・肺、腎・尿路系などの深部臓器をできる深在性カンジダ症があります。  口腔カンジダ症はその病型により症状が異なりますが、口の中に白いコケ(苔)状のものができる場合を偽膜性カンジダ症、粘膜が赤くなる場合を委縮性カンジダ症があり、その多くは偽膜性カンジダ症で、頬・舌・くちびる(唇)に乳白色のコケ(苔)状の症状が現れます。
 痛みなどの症状は殆どありませんが、コケ(苔)の部分を拭ったりすると、はがれてその下の粘膜は赤く、放置すると口全体に広がります。  
 粘膜が赤くなる委縮性カンジダ症は、義歯の下の粘膜に発生することが多く、義歯性口内炎とも呼ばれています。
 口腔カンジダ症は口腔粘膜感染症で、口腔真菌症のなかでは最も多い疾患です。
 しかし、近年の抗生物質の普及や栄養状態の改善などに伴い、細菌性伝染病は著しく減少しましたが、その反面、口腔カンジダ症に代表される真菌症は増加傾向にあります。
 口腔カンジダ症の大部分は生命を脅かすことはなく、また適切な治療により比較的簡単に治癒します。
 もし、口腔カンジダ症を発症した場合には、何らかの全身状態に変化があることを考える必要があります。
 口の中の舌・頬・くちびる(唇)などの粘膜が白くなったり、義歯の下の歯グキが赤くただれてしまった時などは、お近くの歯科医療機関を受診されることをお勧めします。