寝たきりで口臭がひどい高齢者の場合どおしたらよろしいですか

平成28年6月6日(月) 掲載

口臭は、食べカスや歯垢(プラーク)が沢山付いていたり、ムシ歯や歯周病などにより、そこに棲息する多くの細菌によって、衛生状態が不十分な口の中で起こります。
 細菌によって、タンパク質などが分解され、その結果、臭いを放出する物質(硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどの揮発性硫化化合物)が発生します。
 また、舌に舌苔(ぜったい)という白色または黒色のコケ状のものがあり、これらが微量でも人間の嗅覚を強く刺激して、口臭になります。
 口臭を改善するには、口腔ケア(プラークコントロール、歯石除去など口の中の清潔にすること)が大切で、ムシ歯や歯周病などある場合には、その治療も併行しておこないます。
 高齢者に口臭が多いのには、口の中に特徴的な変化があります。  1つは「だ液の分泌量の減少」で、だ液は1日1,000~1,500mlほど分泌され、消化酵素・抗菌物質・渇きを抑える粘液物質などが含まれ、口の中を自浄する働きがあります。
 加齢と共に分泌量が減少して、口の渇わきを訴えるようになり、また利尿剤、降圧剤、向精神薬、抗ヒスタミン剤などを服用すると、副作用で分泌が抑制されることがあります。
 2つ目は「歯周病」です。
 高齢者では進行していることが多く、歯を支えている骨(歯槽骨)が減って、歯グキ縮んで歯と歯のすき間が広がり、食べカスが付きやすくなります。
 また、義歯の装着や嚥下(飲み込む)障害などにより、流動食や軟らかい食べ物を摂取することが多いのも口臭の原因となります。  
 高齢者から口臭を予防するには、その原因を特定して、徹底的な口腔ケア、特に歯磨きが最も優れている方法ですが、歯と歯の間は歯間ブラシが有効な手段となります。
 うがいができる人には、ヨウ素製剤、塩化ベンゼトニウム、アズレン製剤などうがい薬を使用することも効果的ですし、手がうまく使えなければ電動歯ブラシが、麻痺や日常生活動作の低下により歯磨きができない場合には、介護者による口腔清拭(せいしき)や使い捨ての柄付きスポンジ(トゥースエッテ)などで拭き取ることを勧めます。
 義歯を装着している人には、義歯専用ブラシなどを用いて、義歯の裏側やバネの部分などの汚れをきれいに取り除き、就寝時には必ず義歯を外して清掃し、義歯洗浄剤を溶かした水の中で保管していただくことをお勧めします。
 意外と見過ごされやすいのが、口の中に義歯を入れたまま口腔清拭をしてしまうので、介護者は口の中に義歯が入っているかどうかを必ず確認して下さい。
 舌苔は、舌ブラシや軟らかめの歯ブラシ、薬液綿球を用いて清拭して下さい。
 歯周病がある場合には、通常の口腔ケアと歯周病の治療が必要になります。
 また、義歯などが入っていないために、流動食になっているような場合や、中心静脈栄養管理の方は、唾液の分泌が減少し、舌運動が行なわれないので、歯垢(プラーク)や舌苔が付着しやすくなりますので、そんな場合には、歯科医師や歯科衛生士に相談して下さい。
 口の中が乾燥している時は湿潤させ、舌苔なども30分~1時間程度グリセリンを塗布しておくと比較的清拭しやすくなります。
 以上のような口腔ケアを行なっても、口臭が治らない難治性の場合、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎などの耳鼻咽喉科疾患、気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患、糖尿病では歯周疾患の増悪よる甘酸っぱいアセトン臭、肝疾患ではアンモニア臭が起こりますので、歯科医師や専門医に相談してみて下さい。