歯科衛生士が担う次世代歯科医療
その3 歯科衛生士にできること

平成28年7月18日(月) 掲載

前2週にわたり歯科衛生士と超高齢化社会のお口の健康との関係をお話ししました。昔は歯科医院は痛い時に駆け込む場所でしたが、今ではかかりつけ歯科医院へ定期健診で訪れる患者さんも多くなりました。普及しつつあるインプラント治療なども術後の定期健診は不可欠ですし、自分の歯以上にセルフケアも重要です。しかしお口の健康に対する意識が高く定期健診を欠かさない患者さんも肉体的に衰え通院できなくなる時がやがて来るかもしれません。ブラッシングなどのセルフケアも意のままにならなくなる時も来るかもしれません。理想はかかりつけ歯科医が定期的に往診して健診し、毎日のお口のケアは担当歯科衛生士が訪問して行うことです。しかしながら歯科診療所を開設している歯科医師やそこに勤務する歯科衛生士にとって時間的制約や、医療保険や介護保険の制約があるので、従来の在宅診療とは別の発想の新しいシステムを構築する必要がありそうです。
歯科衛生士になるには養成課程のある3年制の専門学校や短大もしくは4年生の大学を卒業し国家試験に合格する必要がありますが、歯科衛生士が病院や施設、在宅での要介護者の口腔ケアをすべてカバーするには現役の歯科衛生士数や新卒者分の増加では不十分です。超高齢化社会に対応するに足る歯科衛生士の数の確保が喫緊の課題と考えられます。
 そこで現在結婚や子育てで離職している歯科衛生士の現場復帰が期待されるのです。歯科医院で常勤で働くのは難しいかもしれませんが、時間的に融通が利くパートなら現役復帰が可能な場合もあるのではないでしょうか。豊橋市歯科医師会では離職している歯科衛生士に復職を考えてもらうプログラムも検討しています。復職へのハードルを下げ、歯科衛生士という国家資格を自らのライフステージに合わせて生かしていただきたいと願っています。
 近年糖尿病や動脈硬化などの全身疾患と歯周病の関係が明らかになったり、健康寿命と残存歯数の因果関係が明らかになったりとお口の健康が全身の健康と深くかかわっていることが分かってきました。食物による窒息死も咀嚼機能と多いに関係があり、誤嚥性肺炎の予防も口腔ケアが欠かせません。周術期(全身麻酔手術前後)の口腔ケアも保険導入され、医科でも歯科と連携したお口の健康維持の大切さが再認識されています。もはや歯科衛生士はお口の健康だけにとどまらず、全身的健康にも深く係る重要な医療系専門職と言えるのです。増大し続ける国民医療費も歯科衛生士のさらなる増加、活躍で削減できるはずです。なにより一生自分の歯でおいしく食べられる喜びは人間の幸せや尊厳の根底をなすもので、今後ますます注目されるべき職業だと思います。
 豊橋市歯科医師会が運営する豊橋歯科衛生士専門学校では、7月21日、7月28日、8月25日にオープンキャンパスを開催します。歯科衛生士という職業の詳細がわかると思いますのでご興味のある方は是非ご参加ください。歯科衛生士が超高齢化社会のお口の健康、全身の健康を守るキーパーソンであることがご理解いただけると思います。