誤嚥性肺炎
平成28年10月10日(月) 掲載
急激に体を動かしたわけでもなく、寒い外気に触れた訳もないのに、高齢者は突然熱を出すことがあります。
熱がなかなか下がらず、なんとなく意識がもうろうとしている状態が続きます。
医師の診察を受けると診断は「肺炎」。
「命に危険があるので、すぐに入院してください!」と言われて、あわてることがあります。
実はこの怖い「肺炎」、原因は口の中の汚れだったのです。
アカ(垢)で死ぬ人はいないと言いますが、口のなかの汚れで命を落としている高齢者はたくさんいるのです。
口の中は食べカスやそれを餌にして繁殖した細菌の巣窟となっています。 それが誤って気管から肺に入り(誤嚥)、肺で病気を起こすことを「誤嚥性肺炎」と言います。
誤嚥性肺炎の起こり方は主に2つあります。
ひとつは、食事中飲食物が食道ではなく、誤って気管に入るもの。
たいていの場合はむせることで、気管から異物を吐き出そうとしますが、一部が気管に入ってしまうことがあります。
もうひとつは、睡眠中気付かないうちに細菌を含んだ唾液を誤嚥してしまうもので、こちらの方が多いと言われています。
高齢者場合、気管支の繊毛運動が弱く、咳(せき)をする力も弱いため、気管に細菌がはいっても出すことができずに肺炎を起こしてしまいます。
特に脳卒中(脳血管障害)の後遺症がある人や、感染症に対して抵抗力が弱い人、老化により嚥下機能が低下している人などは要注意です。
誤嚥性肺炎を決して甘くみてはいけません。
肺炎は日本人の死亡原因の第4位で、ここ10年で急上昇しています。
さらに、肺炎による死亡者の内訳は92%が65歳以上の高齢者であることがわかりました。
◎ ある老人病院の調査 (死亡原因)
入院となった主病因 脳梗塞 30%
脳出血 11%
骨折 10%
脳炎 9%
直接の死因
アルツハイマー 6%
悪性腫瘍 5%
その他 29%
肺炎 33%
感染症 19%
腎不全 11%
悪性腫瘍 6%
その他 19%
口腔ケアで抵抗力アップ
寒くて空気が乾燥しているこの時期、抵抗力が低下した高齢者が最も注意したいのが、インフルエンザです。
ワクチンも型が合えば有効ですが、毎日の口腔ケアという身近な方法がインフルエンザの予防になることをご存じですか。
私たちのからだは普通、細菌やウィルスが侵入しようとしたとき、異物を侵入させまいとする防御機能を持っています。
異物が鼻から侵入しようとすると、鼻毛にからめとられたり、くしゃみで外に飛ばされたりします。
また、口から入ろうとすると唾液に含まれた抗菌物質で弱らせて、喉(のど)への侵入を防止します。
仮に喉(のど)に侵入しても、粘膜につかまって、痰として外へと出されてしまいます。
しかし、口の中が細菌で汚れていては、防御機能がうまく働きません。
口腔ケアは、口の中をきれいにしてだ液がよく出るような状態にしたり、口に飛び込んだウィルスや風邪の細菌などを洗い流す効果があるります。
口の中の、細菌を減らすことで、誤嚥性肺炎も防ぐことができます。
口を健康に保つことは、全身の健康を保つことにつながっているのです