取り外しのできる入れ歯の利点と欠点

平成28年10月17日(月) 掲載

歯を失った部分を人工の歯で回復させる技術は、すでに100年ほどの歴史があり、現代に至るまで総入れ歯を作る材料や方法論は大きく変化しましたが、形態や構成要素はほとんど変わっていません。
 総入れ歯は取り外せることを条件につくられるので、顎の粘膜に密接し、その大部分をおおう歯グキと同じ色のプラスチックで出来ている部分(義歯床)と歯の並びを模して人工の歯で構成されています。
 一方、部分入れ歯は必要に応じて残っている歯に義歯床をつなぎ止めるための装置(バネなど)がついています。
 その装置には実にさまざまな方法が考案されてきました。最もポピュラーなのは金属製のバネを用いたものです。
 総入れ歯は、義歯床を口腔内につなぎ止める歯が1本もない状態で使用するので、口の中で安定する要件が必要です。
 その要件は、
①顎の粘膜に密着し適合していること
②顎の形態がよく、骨が十分にあること
③唾液量が十分であること
④上下のかみ合わせがよく調節されているこ
⑤総入れ歯を維持するように口の周りの筋肉が訓練されていることが挙げられます。
 これらの要件が揃えば、動きにくく、ある程度かめる総入れ歯が出来ます。
 義歯床の下にある顎の粘膜は軟らかいので、かむ力で簡単に歪みます。  
 つまり、歪みの分だけ義歯床が動くということです。
 同時にかむ力は粘膜の下の歯槽骨(顎堤)にも伝わり、多くは数年のうちに顎の骨も少しづつ減少します。
 部分入れ歯の場合は、総入れ歯よりもこの傾向がいくぶん少なくてすみます。
 その理由はバネがあるからです。
 バネは構造上、入れ歯の人工の歯の上にかかる力を歯に伝える役割をもって います。
 そのため、義歯床下の粘膜にかかる負担を弱めることができます。
 入れ歯の利点は、取り外せることができるので、清掃も口から外して洗うことができ、残っている歯の清掃も比較的容易になります。
 また、取り出せることでメインテナンスや「バネが折れた」「歯を抜いて、義歯に歯を追加する」といった部分的にパーツを取り替えたり、追加することが簡単にできます。
 しかし、入れ歯の最大の欠点は、なにといっても装着感の悪いことです。
 初めて入れ歯を使う方の殆どは、違和感を強く感じて、「こんなはずではなかった」と言われます。
 他にも、「入れ歯を入れて話しをしても、聞き返される」とか、義歯が合っていなくてガタガタする時などは、「さしすせそ」「たちつてと」などの発音が不鮮明になり、口が小さくなって発音がしづらいこともありますが、入れ歯の調整と発音訓練(リハビリ)などで回復することが可能です。
 金属のバネが見えて心配という方には、奥の歯にバネをかけて正面から見たときに、目立たなくすることもできます。
 義歯は構造上「取り外す」「口の中に装着する」と操作を繰り返し行いますので、着脱に幾分かの暖み(ガタつき)が必要で、これによって義歯床の動きやすさを生むことになりますので、バネのかかった歯を揺すり、歯に負担をかけることになってしまします。
 さらに、バネのかかった歯の周囲が汚れやすいことです。
 歯の外周にバネがはまるので、歯の外面は自然な形ではありません。そのため、食べ物の流れが阻害され、周囲にプラークや汚れが停滞し、バネをかけた歯はムシ歯になりやすく、同様に義歯床の舌にも食べカスが入りやすくなります。
 着脱が容易な入れ歯は、食後に外して洗浄して、残っている歯のプラークコントロールで対応することができます。
 歯が無いことは「病気」です。
 食べる・話す・見た目を著しく低下させます。
 例えば、足を骨折した時に、整形外科で骨を接ぐ処置を行った後でも、リハビリをしなければ、元通りに歩いたり、走ったりすることは出来ません。  
 入れ歯も同じです。入れ歯を作ったから、今日から何でも食べれるとか、上手に話が出来るという訳にはいきません。
 慣れるまでは、リハビリが必要です。
 焦らずに、少しずつ、自分のもの(入れ歯)にしていくことが大切です。