唾液について考えてみました!

平成28年10月24日(月) 掲載

包丁で指先を切ってしまった」、「針や彫刻刃などで怪我した」とき、とっさに傷口を口に含んでしまったことがありませんか?
 意外なもので、人間の本能なのかもしれませんが、だ液によって傷口を舐めることで、傷の周囲を付いた汚れを落とすと共に、だ液の中に含まれている抗菌物質の作用による感染予防と止血効果が、傷を早く治す働きがあります。
 昔の子供は、ついつい遊びに夢中になって、転んだり、つまづいたりして、すり傷や切り傷を作っても、「ツバでも付けとけ!」と言われた時代があります。
 今のご時世では考えられませんが、どちらかというと、だ液は不潔なイメージとしてとらえている方が多いようです。
 昔の人の知恵や知識は、後世に受け継がれるだけのことはあるものだと感心しきりです。
 だ液の分泌量は、1日約1~1.5リットルくらいと言われ、私たちの健康に欠かせない実に多くの働きがあります。
 だ液は「ムシ歯」の原因とされるムシ歯菌の栄養である食べカスや糖分などを洗い流し、ムシ歯菌や歯周病菌から発生する酸や口の中がアルカリになった時にはなどに中和する働きがあります。
 また、だ液中の成分である「リゾチーム」と「ラクトフェリン」が歯の表面にバリアを張って、「ムシ歯」や「歯周病」の予防をする働きがあります。
 寝る前に、歯磨きをしないで寝てしまうと、睡眠中はだ液の分泌量が少ないためにムシ歯になりやすい環境になることがお解りになるはずです。  「C₁」のムシ歯になる前の初期のムシ歯を「CO」と呼んでいますが、ムシ歯は自然治癒しない疾病といわれていましたが、だ液の中に含まれている「カルシウム」によって再石灰化が促進され、初期のムシ歯「CO」は治癒することが判りました。
 次に、だ液とダイエット効果(肥満予防)はは深い関わりがあることついてお話します。
 だ液に含まれている「アミラーゼ」という消化酵素は、口の中に取り込まれた食物を胃に送り込み、胃液の分泌を促進させる働きがあります。
 「ご飯は噛めば噛むほど甘くなる」といわれますが、「アミラーゼ」がデンプンをブドウ糖に変化させることによって起こる現象です。
 このことを上手に利用すると、ダイエット効果(肥満防止)に繋がります。
 食物を何回もよく噛んで、ゆっくり食事をすることによって、分泌しただ液と混ぜ合わさり、デンプンがブドウ糖(糖分)に変化します。これによって血糖値が上昇し、満腹感が得られます。
 逆に、噛んでいる時間が短いと、満腹感を得るまでに時間がかかり、ついつい食べ過ぎてしまう傾向にあります。
 だ液のネバネバ感の成分である「ムチン」は、口の中や喉の粘膜を食べ物によって傷つかないように守り、噛みやすくしたり、飲み込みやすくしたりする働きがあります。
 また、だ液に含まれている「ペルオキシターゼ」という成分は、食品添加物などに含まれている発がん性物質を解毒させたり、糖尿病の症状を改善する働きがあります。
 現代病のストレスや精神系の病気も、だ液の分泌が影響することが判ってきました。
 だ液は、私たちが生活を営む中で、とても重要な働きを与えてくれます。
 だ液の分泌量が多ければ多いほど、その効果が大きくなりますので、当然なことですが、だ液をたくさん分泌させるためには、噛む歯がたくさんあった方が有利になります。
 そのためにも、「ムシ歯」や「歯周病」で歯を失わないように、毎日のプラークコントロール(歯磨き)をしっかり行って下さい。