授乳と顎(あご)の発育について

平成28年12月5日(月) 掲載

授乳は、母乳や人工栄養のミルクを赤ちゃん飲ませることです。
 母乳やミルクなどの栄養物を取り込む方法には、お母さんのおっぱいから直接取り込む“直母哺乳”と哺乳瓶などを用いる“びん哺乳”があります。
 また、2種類の栄養物の両方を摂ることを混合(栄養)と呼び、普段はママが直母授乳をして、時々パパが搾乳した母乳を人工乳首でびん哺乳をさせる2種類の摂取方法の両方を使うことを“併用”と呼びます。
 赤ちゃんが母乳やミルクを飲むには、顎や舌などを使わなければ出来ません。
 この哺乳運動が、顎の筋肉の発達させ、さらに脳の刺激となり、全体的な発育にいい影響を与えます。
 顎の発達は、咀嚼(そしゃく=噛む)力の発達とともに正しい歯並びを作る基礎となります。
 哺乳は、吸着・吸啜(きゅうてつ)・嚥下(えんげ)から成り立ちます(図1)。
 吸着は口唇と舌で乳首・乳輪部を捕らえ、密着状態を維持することです。
 吸啜(強く吸うこと)は舌の波動状運動によって乳首・乳頭を圧搾、吸引して母乳やミルクをしぼるように引き出すことです。
 嚥下(=飲み込むこと)は、母乳やミルクを食道へと移送することです。
(図1)
上手に吸啜しても、吸着が出来なければ、引き出した母乳は口角(こうかく=上唇と舌唇の接点)から漏れ出てし、吸着・吸啜ができても、嚥下が上手に出来ないとむせ込んでしまいます。
 吸着・吸啜・嚥下のどの一つが欠けても哺乳運動は成立しません。
 その意味で、この3つは哺乳の3原則と言えます。
 吸着では、口の周りの筋肉を使い、唇を密着させ、口の中を密閉空間にして、陰圧(負圧)により母乳を引き出し、口角などからの母乳もれを防止します。
 赤ちゃんは、哺乳をする時に舌を波動状に連続してうねらせ母乳を引き出していますが、この運動は約0.8秒の周期で、1回の哺乳で800から1000サイクル繰り返されます。
 嚥下は、哺乳をしている赤ちゃんは大人と異なり、呼吸をしながら飲み物を食道へ流し込むようになっています。
 口や舌、顎の筋肉を上手に使って哺乳することは、栄養摂取だけでなく、授乳 後の離乳食を摂取するための機能と、さらに顎に刺激が加わることで、その発育に大きな影響を与えます。
 赤ちゃんの哺乳運動には、まだまだ不思議な点が多々ありますが、赤ちゃんが育っていくことは、母子関係、父子関係、家族全体が成長していくことです。
 これら全ての中心に、赤ちゃんが哺乳をすることがあります。
 お子さんの授乳や顎の発育などで気になる点がありましたら、かかりつけの歯科医にご相談下さい。