歯科衛生士がサポートする「一生自分の歯で噛める人生」
その2

平成29年7月10日(月) 掲載

先週の本欄で、80歳で20本の歯を残そうという「8020運動」においてその目覚ましい達成率の向上に歯科衛生士が大きく寄与している、と述べました。そう考える理由についてお話ししたいと思います。
 人が歯を失う二大原因は虫歯と歯周病です。つい40年ほど前までは「虫歯の洪水時代」などと言われましたが、その後歯科医師数および歯科医院数も急激に増加し、さらに歯科衛生教育の浸透、予約診療による計画的な治療や定期歯科健診の一般化などにより虫歯の数も急激に減少しました。また虫歯になっても初期治療で対応でき、抜歯が必要な重篤な虫歯まで進展することも減少しました。歯を失う原因の一つである重篤な虫歯の減少は8020達成率向上の大きな要因の一つです。
 お口の中のクリーニングで歯垢を除去したり、フッ素を塗って歯の質を強化する「予防処置」と、食生活などの生活習慣に対するアドバイスやブラッシング方法の指導などの「歯科保健指導」は、先週の本欄でお話しした通り歯科衛生士の主な業務ですが、このような地道な歯科衛生士の活躍が虫歯の減少という実を結んだとも言えそうです。歯科医師は院長1名だけという歯科医院が多いので、歯科医師だけではとてもこれほどの結果は達成できなかったでしょう。虫歯の減少は患者さん、歯科衛生士、歯科医師、三者の努力で成されたことだと思います。
 さらに虫歯の洪水時代には後回しにされがちだった歯周病のケアですが、これも定期検診の重要性や病因が広く認知されるようになり、歯科衛生士、歯科医師の行う歯石除去などの予防処置が浸透して今や歯科医院で行う処置のメインストリームの一つになりました。歯周病は慢性疾患で初期には自覚症状があまりなく、気付いた時にはかなり進行しているケースも多いのですが、定期的なメインテナンスやセルフケアとしてのブラッシングにより、重篤化し抜歯に至ることを予防することができます。虫歯と同様歯科衛生士による「予防処置」と「歯科保健指導」が歯周病でも奏功し、8020達成率向上のもう一つの大きな要因になったと言えましょう。
 このように歯科衛生士の存在が、虫歯や歯周病などを重篤化させず、国民のお口の健康を守り、「一生自分の歯で噛める人生」を推し進めてきたことがご理解いただけたと思います。近年お口の健康が全身の健康と密接な関係があることが注目され始め、糖尿病や誤嚥性肺炎、動脈硬化などにおいて歯科医療の参画の重要性が認識されるようになりました。お口の健康が健康寿命の源とも言えそうです。
 つまり歯科衛生士の仕事はお口の中の健康だけにとどまらず、全身の健康に関与する重要な仕事と言えましょう。このように重要でやりがいのある歯科衛生士という職業を広く知っていただくため、豊橋歯科衛生士専門学校では7月20日、7月27日、8月24日にオープンキャンパスを開催します。在校生から直接忌憚のない話を聞くチャンスでもありますので、将来の進路に悩んでいる女性に是非参加してほしいと思っています。