歯科医院における院内感染対策

平成29年9月4日(月) 掲載

歯科医院における院内感染対策は、平成19年4月1日より『良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法の一部を改正する法律(改正医療法)』が施行され、 一般の歯科診療所にも医療管理体制の構築が義務付けられるようになりました。 それまで、器具・器材の滅菌・消毒を中心におこなわれてきた歯科医院(無床診療所)でも、 現在は大きな総合病院や有床診療所(入院設備のある診療所)と同じように、「医療の安全管理のための体制の確保」が義務づけられました。この法律に基づき、 「医療安全管理確保に関わる指針およびマニュアル」の作成と設置が義務付けられ、愛知県歯科医師会の会員歯科医院では、日本歯科医師会および愛知県歯科医師会からのデータベースを元に、 各歯科医院独自の「医療安全マニュアル」を作成して、診療体制を確立しています。MRSAやインフルエンザなど、近年の院内感染を防止するための感染管理は、 患者さんおよび医療に携わるスタッフを守るための人道的観点から、これまでの認識が大きく変わろうとしています。医療過誤の発生が連日報道されていますが、 院内感染の発生も「医療事故」の1つとして認識され、院内感染が発生した病院やクリニック(診療所)が報道されると、それによって評判を落とすことに繋がるケースも発生しています。 よって「院内感染対策」は、医院経営におけるリスクマネージメント上必須の懸案と考えられています。一般的に歯科医院では、常に口の中の粘膜や抜歯などによって生じた血液への接触にさらされ、 さらに血液やだ液などの体液が混入した飛沫に曝露していることから、一般病院以上の予防策が要求されます。実際問題として、院内感染予防を行う上で病院、 歯科医院の規模の大小に関わらず適用される大原則が「標準予防策」(スタンダードプリコーション)と「感染経路別予防策」です。「標準予防策」には、 患者さんの血液や体液、分泌・排泄される湿性物質、いわゆる痰(たん)、膿(うみ)、患者さんの創傷や粘膜に触れる場合は感染症の恐れがある場合はそれに対処する方法で、 これらの物質に触れた後は手洗いをし、あらかじめ触れる恐れのある時は、グローブ、エプロン、マスク、アイシールド等を着用するというのが基本になります。 この予防策では、感染症の有無に関わらず全ての患者さんに適用されます。簡単にいうと「感染症の有無にかかわらず、血液、体液、分泌物、排泄物は全て危険」 ということが大前提になります。また、初めて来院された患者さんに、問診で感染症の有無を確認しても申告していただけなかったり、事前の検査においても、 実際には病気に感染していたとしても陰性を出してしまうケースもあります。具体的な予防策として、グローブ(ゴム手袋)、エプロン、 マスクなどは患者ごとに必ず交換するディスポーザブルタイプの物が予防につながると考えられますし、器具に関しても、確実な滅菌をする前に、十分洗浄をすることが必須条件となります。  滅菌・消毒、ディスポーザブルのものを行うためには膨大な経費がかかりますが、私たち歯科医は、来院される全ての皆さまの安心と安全を最優先に、 良質な歯科医療を提供していきたいと考えていますので、歯科医院に来院される皆様へご理解とご協力をお願いします。