妊娠中のお口の中の特徴は?

平成30年9月24日(月) 掲載

一般的に妊娠すると、妊娠前とくらべてお口の中の状態は悪くなると言われます。
 ひと昔前までは、「赤ちゃんに栄養を取られてしまって、歯がボロボロになってしまった!」とまで言われていましたが、歯に取りこまれた成分は、赤ちゃんに吸収される(取られる)ことはないので、迷信だということが判っています。
 では何故、妊娠を経験するとお口の中が悪くなるのでしょうか?
 そして産後にムシ歯や歯周病(歯肉炎)で、歯科医院を受診する方が増えるのでしょうか?
 妊娠中すると、お口の中のだ液は酸性になり、粘っこくなります。
 また、妊娠によって女性ホルモンが増加することにより、歯周病菌が増殖して歯グキの炎症を進行させてしまいます。
 このようにお口の中が、ムシ歯や歯周病になりやすい環境になることに加えて、悪阻(つわり)により歯磨き(ブラッシング)がつらくなったり、間食が増え、酸味や甘味が強い嗜好品を好んで食べる傾向が強くなり、このような生活環境の変化などの要因が重なり、ムシ歯になりやすく、歯グキが腫(は)れて出血しやすくなったりします。
 また、妊娠が可能な時期と「親知らず」が生える時期とが重なることが多く、「親知らず」の周りの歯グキが痛んだり、腫(は)れたりすることも起こります。
 さらに、お口の中の環境が悪化することに伴い、口臭も発生しやすくなります。
 こういった一連の症状は、日常の生活において、歯磨き(ブラッシング)でお口の中を清潔に保つことができれば何の心配いらないのですが、妊娠中においては、特に悪阻(つわり)が酷い時などは、歯磨き(ブラッシング)が思うようにできなくなってしまいます。
 そんな時、少しでもその辛さをやわらげられるように、次のようなことを提案しています。
 ①歯磨き(ブラッシング)は、食後におこなうのが効果的ですが、妊娠中はそこにこだわらず、つらい時間は避け、体調の良いときやリラックスできる入浴時におこなって下さい。
 ②歯ブラシは、できるだけ小さな歯ブラシを使って下さい。
 ③歯磨き粉(歯磨剤)は、出来るだけ匂いの少ないものを使って下さい。
 ④なるべく下を向いて歯を磨くようにして下さい。
 ムシ歯や歯周病が進行してしまって、妊娠中に歯科医院を受診しても、妊娠の時期によっては治療が制限されことがあります。
 基本的には妊娠を計画した段階で、歯科健診を受け治療を済ませておくと安心です。 また妊娠が判ったら、早い段階で歯科を受診することで、ムシ歯や歯周病の予防や早期発見につながります。
 その際、母子手帳を持参し、「妊娠していること」、「妊娠週数」、「出産予定日」を必ず歯科医に告げてから診察を受けるようにして下さい。
 妊娠中は、お口の中の状態を良好に保つべく、日頃から「かかりつけの歯科医院」を持ち、定期的に歯科健診を受けることが大切です。