健康は口から入り口から出て行く
歯科衛生士の視点から(2)

令和1年7月15日(月) 掲載

前回は「8020」達成者が平成28年の歯科疾患実態調査で50%を超えたこと、そしてそれが手放しで喜べないことを書きました。それはなぜでしょうか?  
 人生100年時代も近いと言われる今日、80歳は通過点に過ぎません。実際に85歳以上では8020達成者は約25%に減り、一人あたりの虫歯の数も前回の調査より増加しています。これは高齢のため自分で歯磨きができなくなったり、歯科医院に通院することが困難になることが原因ではないかと推測されます。それ故高齢者や要介護状態の患者さんのお口の健康をどう守るかが今後の大きな課題となるのです。すでに病院や介護施設で活躍している歯科衛生士もいますが、それに対応できる人数にはまだ到底及びませんし、在宅の要介護者とどのように関わってゆくのかも今後の課題です。歯科衛生士が関与しない今後の高齢者・要介護者の歯科医療、口腔ケアはあり得ません。
 近年糖尿病や動脈硬化などの全身疾患と歯周病の関係が明らかになったり、健康寿命と残存歯数の因果関係が明らかになったりとお口の健康が全身の健康と深くかかわっていることが分かってきました。食物による窒息死も咀嚼機能と多いに関係があり、高齢者の死因の上位を占める誤嚥性肺炎の予防も口腔ケアが欠かせません。現在胃ろうや高カロリー輸液を余儀なくされている高齢者の摂食・嚥下機能のリハビリに歯科衛生士が積極的に関与することも期待されるところです。周術期(全身麻酔手術前後)の口腔ケアも保険導入され、医科でも歯科と連携したお口の健康維持の大切さが再認識されています。もはや歯科衛生士はお口の健康だけにとどまらず、全身的健康にも深く係る重要な医療系専門職と言えるのです。
 しかし、就業している歯科衛生士の絶対数はまだまだ全国的に不足しており、今後活躍の場が広がり、将来性が期待される歯科衛生士という職業を広く知っていただくため、豊橋歯科衛生士専門学校では7月25日、8月8日、8月22日にオープンキャンパスを開催します。将来の進路に悩んでいる女性に是非参加してほしいと思っています。
 さらに、慢性的歯科衛生士不足を解消する手段の一つとして期待するのは、現在結婚や子育てで離職している歯科衛生士の現場復帰です。常勤として働くのは無理でも、時間的に融通が利くパートなら現役復帰が可能な場合もあるのではないでしょうか。豊橋歯科衛生士専門学校では離職している歯科衛生士に復職を考えてもらうプログラムも検討し、既卒の歯科衛生士(他校出身者も含む)も全力でサポートしています。歯科衛生士という国家資格を自らのライフステージに合わせて生かしていただき、今後加速する超高齢化社会の有力な援軍として活躍していただけたらと思っています。
 それでは実際問題として、自身でお口の健康維持が管理できなくなった場合、それを放置するとどのようなことが起こるのでしょうか?次回はお口が健康の出口とならないように「オーラルフレイル」のお話をしたいと思います。