健康は口から入り口から出て行く
歯科衛生士の視点から(3)

令和1年7月22日(月) 掲載

最近マスメディアなどで時々目にする「フレイル」という言葉、ご存知でしょうか?加齢とともに心身が弱った状態になることで、健康な状態からフレイルを経て病気や要介護の状態になると考えられています。このフレイルに早期に気付き、予防・治療をすることによりフレイルの進行を食い止め、また改善することが可能で、要介護状態への移行を阻止し、ひいては健康寿命を延ばすことにつながります。
 全身的フレイルを引き起こす大きな要因の一つにお口の衰え「オーラルフレイル」があります。オーラルフレイルを放置するとお口の機能が徐々に低下し、低栄養状態からサルコぺニア(筋肉量減少による身体機能低下)、ロコモティブシンドローム(移動機能の低下)へと負の連鎖が始まってしまいます。健康の入り口であるはずのお口が機能しなくなるために起こります。
 オーラルフレイルはお口の健康に無関心になることから始まります。定期健診に受診されなくなった、歯磨きが雑になったなどで歯科衛生士が気付く場合もあります。  次の段階はお口のささいなトラブルの連鎖です。具体的には食べこぼし、むせる、滑舌の低下、咀嚼能力の低下などです。本人が意識しなくてもご家族が気付く場合もあります。  そしてさらに食べたり飲みこんだりする機能が低下すると低栄養状態から全身的フレイルの重症化へと進んでしまいます。そしてさらに進行すると咀嚼障害、摂食嚥下障害となり食べる機能が失われ要介護状態となってしまいます。栄養も経管摂取となります。悲しいことにお口から健康が逃げて行ってしまうのです。  オーラルフレイルで大切なことは初期のうちに気付き対応することです。それによりフレイルを改善し、重症化することが防げるからです。決して「年だから」とあきらめないでください。 
 初期のオーラルフレイルのコントロールは歯科衛生士だからこそできることも多々あります。今後ますます活躍が期待される歯科衛生士という職業を広く知っていただくため、豊橋歯科衛生士専門学校では7月25日、8月8日、8月22日にオープンキャンパスを開催します。やりがいのある職業に就くことを希望する女性に是非参加してほしいと思っています。歯科医療がお口の健康のみならず、全身的健康や健康寿命に関わる重要な仕事であるのだと再認識していただけることと思います。
 先に述べた歯科疾患実態調査によれば、小児から学童期の虫歯は毎回減少する傾向が有り平成5年に比して平成28年では半減していますが、20歳過ぎの成人では減少傾向はそれほど顕著ではありません。歯周病についても有病率はあまり変わらないようなので、そのあたりが歯科医療が抱える今後の課題だと考えます。
 若いうちから定期的に歯科健診を受け、ご自身のお口の中を熟知したかかりつけ歯科医院・かかりつけ歯科衛生士を持つことが健康長寿の秘訣です。