歯の神経を取らなければいけない治療となるムシ歯の限界点
令和2年3月2日(月) 掲載
ヒトの体の中で一番かたいのはどこかご存知ですか?
「骨だとおもいますか?爪(つめ)だと思いますか?」
答えは「歯」です。
そんなかたい歯にも神経が通っています。
歯科では簡単に「神経」と言っていますが、実際には神経だけでなく歯に栄養を送る血管も通っています。
ムシ歯がある程度進行してしまうと、神経を取らなければならない場合がありますが、これは将来的に歯の条件が悪くなってしまいます。
ムシ歯の進行は、①エナメル質(歯の表面)にとどまるもの ②エナメル質の下の象牙質まで達するもの ③神経まで達するもの ④歯を抜かざるを得ないもの この4つに分けられます(②と③はとても慎重に区別されます)。
「痛い思いをするのなら、神経なんか無ければいいのに!」と言われる患者さんもおられます。
神経を取ってしまうことで、歯自体の痛みや熱い冷たいなどの温度を感じることがなくなりますが、これでは、治療後の歯に対して無防備になります。
神経が残っていれば、感覚で新たなムシ歯を察知できますが、神経がないと無感覚のままムシ歯は進行してしまいます。
それと、神経とともに血管までなくなることで、歯の強さや柔軟さが少なくなり、歯が割れやすくなることも見逃せません。
失った強さを取り戻すために、神経を取った歯には土台を入れ、その上に冠をかぶせるなどの治療が必要になりますので、必然的に治療回数が多くなり、結果として治療費も高くなります。
以上のことから、「なるべく歯の神経は取らない方がいい」ということがお解りいただけたと思います。
歯科医院でも、なるべく神経を取らずにすむ方法を模索しています。
深いムシ歯で神経まで達していそうな場合、まずレントゲン写真でムシ歯のおおよその深さを確認します。
ここで明らかにムシ歯が神経まで達していれば神経を取りますが、微妙な場合は実際にムシ歯の部分を注意深く取りのぞき、神経を残すかどうかの判断をすることになります。
ただ、神経を残しても治療後痛みがひどく出る場合や、治療前から痛みが強い場合などは神経を取ってしまう方がいいこともあります。
この判断は、歯科医師が実際にお口の状況を診て行います。
では神経を取らないようにするにはどうすればよいのでしょうか?
正解は、当然なことですが「ムシ歯を作らない!ムシ歯をひどく進行させない!」これにつきます。
治療が必要なムシ歯は、程度が軽いうちにしっかりと治しておく必要があります。
初期のムシ歯はご自分ではなかなか見つかりにくいものですので、定期的に健診を受けることをお勧めします。
不幸にて歯の神経を取ってしまった場合は、歯の強度が低下していますので、歯を食いしばりや硬いものの噛み過ぎに十分に注意して下さい。