歯科衛生士が行う「食育」とは

令和2年4月20日(月) 掲載

食育」は、いわゆる「食べる」という面からの「食事」や「食材」のことだけでなく、食物をバランスよく食べるための知識を身につけ、食品の選び方を学び、また食堂、食卓、食器、食具など、食事の環境やそれらを計画することなど、「食の周辺」や「食文化」のはぐくみを伝え、さらに新しい食文化の創造など、広い視野で「食」について学んだり、考えたりすることです。  
 歯科からの「食育」は,歯や口の発達に応じて、食べるという機能の発達を促し、良く噛んで食べる習慣を獲得し、歯や口の健康を守ることで食べる機能を維持して、生涯を通じて安全で快適な食生活が送られるよう支援します。
 その中でも、患者さんと密なコミュニケーションが図りやすい歯科衛生士は、「食育」の実践者として最も適したポジションであると考えられます。  そして、それぞれのライフステージに合わせた「食べ方」と、口と身体の健康のアドバイスをしていくことが重要となります。
 具体的には、授乳期における母乳を通して母子のふれあいによる相互の育成、母子間の愛着関係を作り上げるために様々な不安を解消して、日々の生活で母親へのサポートができます。
 離乳期では、食物の取り込みにより、それをつぶし、だ液と混和させて味わい、食塊にし、嚥下(飲み込む)するまでの一連の「食べる機能」を獲得する時期で、口の動きから、どの段階なのかを理解することで、離乳を無理なく進めていくことができることを進言します。
 乳児期では、乳歯の放出に応じて、噛み潰す程度でまとまりやすい食材を使い、一口量を調節することや、硬さや大きさの異なる種々の食品をゆっくり噛んで咀嚼(噛むこと)の発達を促す調理形態や、歯ブラシを使った口腔ケア(歯みがき)の習慣づけ、甘味飲料の摂取、就寝時の授乳習慣、さらに食具の使用において、手づかみ食べからスプーン食べへと移行し、続いてフォーク、3歳を過ぎてから箸を使うこと、食環境の整備では、1日3回の食事が規律性あるものとして、食欲を育て、家族と食卓を囲むことで、おいしさを共感し、食べ方や食事のマナーを覚えます。
 ゆっくり噛んで、だ液の分泌を高まることで、不正な歯並び、噛み合わせ、ムシ歯などへの注意と生活リズムの確立などを指導します。
 学齢期では、食べ方や噛み合わせの問題(歯並びの異常、早食い、丸飲みなど)に対して、個々の状況に応じた食生活や食習慣の改善を、成人期ではメタボリックシンドロームへの予防のために、よく噛んでゆっくり食べる習慣や確実な口腔ケアの実践で、口腔機能の維持を図ります。 高齢期では、専門的な歯、口の清掃などにより、現存歯の維持と歯や口の機能低下に応じた指導などを行います。
 このように歯科衛生士は、「食育」に対して、実践的なサポートとアドバイスを行ないながら、家庭、学校、職場、地域など、さまざまな皆様と連携を図っていくキーパーソンなのです。