学校からの治療勧告書

令和2年5月4日(月) 掲載

早いところでは4月の下旬頃から、学校に通う児童や生徒の歯科健診が始まっています。
 現在の学校歯科健診では、昔のような「ムシ歯」や「歯肉炎」をチェックする健診から、歯並びや噛み合わせ(不正咬合)、顎関節(がくかんせつ)の状態、歯垢(プラーク)の付着状態、歯石の有無など、口の中を総合的に健診するようになりました。
 最近は昔と違って、ムシ歯を探す方が難しいくらい少なくなりましたが、逆に歯肉炎や歯並びの悪い子どもたちが多いのに驚かされます。
 子どもたちのムシ歯が減った背景には、プラークコントロール(ブラッシング)の重要性やフッ素などの予防によって歯を守ろうとする環境が整ってきたこと、テレビ・雑誌・インターネットなどから、歯科に関する情報を得る機会が増えたこと、そして何といっても、歯で苦労した世代の人たちが、子どもを持つ親となり、「自分の子どもには歯で苦労させたくない!」という意識が強く、口の中に関心をもった人が多くなったことなどが挙げられます。
 歯肉炎や歯並びが悪い子どもが増えた原因は、生活様式や食生活の変化が挙げられます。
 今の子どもたちの好きなものといえば、ハンバーグ・カレーライスに代表されるファミレス系の食事を好み、おやつもスナック菓子やファーストフード系のものが多いようです。
 軟らかくて、何回も噛まずに食べられるものが主流で、また「好き嫌い」や偏食傾向が強く、栄養のバランスが伴わないことがしばしば指摘されています。
 昔と比べても噛む回数が減っていることで、顎(あご)の成長や発育が後退しているばかりでなく、持続力が低下していたり、「すぐにキレる子」がでてきたり、軽く転んだだけで受け身も取れずに骨折してしまったり、運動能力や精神構造にも影響が出てきてしまっています。
 さらに、外で遊ばない世代の子どもたちが、こうしたことに追い打ちをかけているような気がしてなりません。学校の歯科健診は、単なるムシ歯探しの健診ではありません。
 子どもたちの成長・発育や学習を阻害するもの、将来的に悪影響を及ぼす可能性のある口の中の原因を発見して、早期に改善することを促すことが学校歯科健診の目的なのです。