お口の中の「カビ」について

令和2年6月1日(月) 掲載

カビ」は、湿気を好み、ありとあらゆる場所に発生し、匂いも伴い、私たちの生活も不愉快にします。「カビ」には、大きく分けて「青カビ」、「赤カビ」、「黒カビ」があります。
 「青カビ」は、パン・餅・ミカン・チーズなどに繁殖して、ペニシリン(抗生物質)を生産するカビとして知られています。
 「赤カビ」は、悪さをして食中毒を起こすものもありますが、反対に赤麹やチーズ、豆腐ようなどの、美味しい食材になります。
 「黒カビ」は、空気中や土壌に生息して、湿気の多い場所に発生します。お風呂場や洗濯機の内側などに見られます。
 ところで、口の中にも「カビ」が生えることをご存じですか?
 カンジダ・アルビカンスと呼ばれる、水虫の親戚にあたる「真菌」が、口の中に異常に増殖すると、『口腔カンジダ症』という病気になります。
 頬の粘膜、舌の上、唇の内側に白っぽい苔(こけ)の様なものが付いて、拭きとると赤く少し腫れぼったい感じがあります。 熱い物や、刺激物に敏感になり、歯磨きもつらくなります。 「真菌」は、もともと口の中に存在する細菌で、病原性に乏しく、抗生物質やステロイド剤を服用していと、細菌のバランスが崩れ、抗生物質の効かない「真菌」だけが異常に増えて発症することがあります。
 健康な人では発症しないような、弱毒微生物が原因で発症する感染症を「日和見感染(ひよりみかんせん)」と言います。
 一般的に症状を誘発する病気として、悪性腫瘍、血液の病気、免疫不全症、糖尿病などの全身的な病気が挙げられますが、抵抗力の弱い乳幼児、体力の低下した高齢者にも発症します。
 高齢者では、口の中や入れ歯(義歯)の掃除が不十分だと、特に上の入れ歯(義歯)の内面と上顎(うわあご)に発症しやすく、さらに舌の表面へと広がっていきます。  
 HIV感染では、免疫不全のために様々な「日和見感染(ひよりみかんせん)」を発症しますが、その代表的な症状が、口の中や食道、気管などの「カンジダ症」で、それも早期に起こるのが特徴的です。
 また、健康な方でも、抗生物質を飲んでいたり、喘息の治療薬・ステロイドの吸引剤を使った後にうがいを怠ったり、歯磨き不足だったりすると、『口腔カンジダ症』を発症することがあります。
 『カンジダ症』は、局所的なステロイド剤の使用で悪化してしまいますので、この場合は早めに「抗真菌剤」の投与が必要となります。
 風邪予防のために総合感冒薬を常用することは、過剰予防となり、「真菌症」を起こしやすくする原因となります。
 実際に、抗生物質の普及や栄養改善などが進んで細菌性の感染症は減りましたが、反対に「真菌症」は増加傾向にあります。「口腔カンジダ症」の大部分は、命を脅かすことは少なく、適切な治療により比較的簡単に治癒します。
 もし発症した場合、全身状態の変化や売薬も含めて薬の使い方を見直す必要があります。
 お口の中に白っぽい苔(こけ)の様なものを発見したら、早めに内科、皮膚科、あるいは歯科医院への受診をお勧めします。