広がっていく歯科衛生士の仕事と役割

令和3年3月1日(月) 掲載

歯科衛生士は、歯の治療をサポートするだけではなく、患者さんの健康を維持・向上をする上で重要な役割を担う専門職です。
 これまで、歯科衛生士の業務は、歯の治療時に歯科医師をサポートする「歯科診療補助」、歯を失う多くはムシ歯や歯周病によるもので、その原因である歯垢(プラーク)や歯石など、口の中の汚れを専門的に取り除き、フッ素などの予防処置を行う「歯科予防処置」、ヒトは生まれてから高齢者に至るまで、その各ライフステージにおいて、生活習慣に合った適切な指導を行う「歯科保健指導」の3つが大きな柱でした。
 しかし、我が国は世界に例をみない超高齢化社会に加え、福祉に重点をおいた政策が拡大されました。
 病気の予防、口の中の衛生管理、リハビリなど、一生自分の歯で食べられる・話ができる・歯の美しさといった喜びから生活の質(QOL)の向上を図るべく、「口腔ケア」、「訪問歯科診療」、「障がい者歯科診療」などの高齢者や福祉の専門分野まで、歯科衛生士の活動範囲は拡大しています。
 例えば、毎年猛威を振るうインフルエンザなどのウイルス感染、高齢者に多い肺炎(誤嚥性肺炎)、歯周病と糖尿病の関係、他にも感染性心内膜炎、低体重児出産など、「歯科(歯周病)と全身疾患」と関わりが判ってきました。
 ムシ歯も歯周病も、歯に付着する歯垢(プラーク)によって発生する細菌感染による病気です。  こうした歯(ムシ歯)や歯グキ(歯周病)から、全身の健康を脅かす病気を予防するためにも、歯科衛生士による「口腔ケア」が重要な役割を果たすことになります。
 そして、全身状態との相互関係を重視した歯科治療に加え、治療後のメインテナンスの重要性が更に大きな位置付けをされるようになりました。
 歯科衛生士が、こうした取り組みに関わることよって、お口の中の健康管理への関心が高まり、皆さんの健康への意識が広まり、日常生活においても、災害時の有事の際においても、人生のどのライフステージにおいても、欠かすことができない存在になります。
 今後更に、歯科衛生士の活躍の場は、歯科診療所・病院などの歯科診療施設に止まらず、保健や福祉の分野の更に深いところに広がるものと思われます。
 専門的な知識や技術を携えて、お口から心身全体の健康についての理解と共に、人を思いやる優しい心と緊張をやわらげる雰囲気づくりなどのメンタルケアも含め、今後ますます歯科衛生士の必要性がクローズアップされていくことと思われます。