歯科衛生士が考える新型コロナ感染症 その1

令和3年7月5日(月) 掲載

私は豊橋市内の歯科医院に勤務する歯科衛生士です。コロナ禍の今、今週から3回にわたり歯科衛生士の視点で、歯科医療の現状を考えていきたいと思います。
 ご存じのように新型コロナウィルスは唾液やその飛沫から感染すると言われていますので、歯科医院での感染を心配する患者さんがいらっしゃるのも当然ですし、 私自身も周囲の人々から歯科治療の適否について相談を受けたり、私個人の感染を心配してくださる方もいらっしゃいます。 歯科医院に勤務しているという偏見で心無い言葉をかけられたこともあります。実際、私が勤務する歯科医院でも昨年来予約のキャンセルなど1日の受診患者の減少を実感しています。
 今年の1月19日に吉村大阪府知事がSNSで「コロナウィルスは口の中、唾液に多く含まれている。なのでマスクが有効だし、飲食の場も指摘される。 一方で利用者側がマスクができない環境に歯科医院がある。大阪には5500もの歯科医院があるが、クラスター発生はゼロ。感染対策の賜物と思うが、何かある。 何か?専門家には、是非分析してもらいたい。」と発信されましたがその答えを探りながら、皆様の歯科治療に対する不安や疑問にお答えできればよろしいかと存じます。
 院内感染には次の4つのパターンがあります。
 ① 医療スタッフから患者さんへの感染
 ② 患者さんから医療スタッフへの感染
 ③ 患者さんから患者さんへの感染
 ④ スタッフ間の感染
 上記4パターンすべての感染経路を押さえ込まなければクラスターの発生は予防できません。 この原稿を書いている現在も愛知県内においては歯科医院でクラスターが発生したというニュースは聞いておりません。歯科医院でクラスターが発生していないのは何故なのでしょうか?
 実は新型コロナ以前から歯科にはスタンダードプリコーション(標準予防策)と言う規範がありました。 つまり患者さんを感染症の有無によって区別するのではなく、すべての患者さんが新型コロナのような感染症を持っていると仮定し、その前提で診療をするというスタイルです。 歯科医療提供側にそのような高い感染予防理念があれば上記の4パターンすべての経路を抑えることができると考えます。吉村知事の疑問に対する答えはそのあたりにありそうです。 その具体策については次回詳しく述べたいと思います。
 私が心配するのは患者さんの受診控えはもちろんですが、進路に迷う若い人が医療関係を敬遠するような風潮です。 豊橋歯科医師会が運営する豊橋歯科衛生士学校では今年も夏休み期間中(7月29日、8月5日、8月19日)に感染対策を充分にとってオープンキャンパスを開催しますので歯科衛生士を志す方はぜひ参加し、 新型コロナウィルスに対する正しい知識を得て不安を解消してください。ご家族のご参加も歓迎いたします。