~ 本当に怖い歯周病。身体への影響とは ~

令和4年4月25日(月) 掲載

歯周病(歯槽膿漏)とは、歯を支えている歯ぐきや骨の病気で
 ・歯ぐきが腫れる
 ・歯ぐきから血が出る
 ・歯ぐきから膿が出る
 ・歯ぐきがむず痒いような感じがする
 ・口臭がする ・歯がぐらつく
 ・以前より歯の長さが長くなったように見える
 ・口の中が粘つく
 などの症状が特徴です。
 言うまでもなく歯周病は口の中の慢性炎症ですが、ここの所、歯周病と全身の病気との関連性が注目されてきています。歯周病が進行すれば、口の中の細菌の数が増加し、常に口の中が炎症状態になります。炎症が起これば歯肉が赤く腫れ、少しの刺激でも出血しやすくなります。出血しやすくなるということは、そこから口の中の細菌や細菌の出す毒素が血管に入り込み全身に巡りやすくなるということです。
 実際に関係があるといわれている全身の病気には、
 ○糖尿病
 ○動脈硬化(虚血性心疾患、脳梗塞)
 ○感染性心内膜炎
 ○誤嚥性肺炎
 ○低体重児出産 などがあります。

 ○糖尿病  
 以前から糖尿病に罹っている人には歯周病が多いことは知られていましたが、最近になって歯周病になると糖尿病が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。腫れた歯ぐきから血管に入り込んだ歯周病菌の出す毒素は、脂肪組織や肝臓からのTNF-αという物質の生産を強力に推し進めます。TNF-αは血液中の糖分の取り込みを抑える働きをして血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまうのです。

 ○動脈硬化
 歯周病菌の刺激により動脈硬化を誘発する物質が出て血管内壁にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)が着いて血液の通り道が細くなります。プラークが剥がれて血の塊ができると血管が詰まり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを起こします。歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になり易いと言われています。

 ○感染性心内膜炎
 大手術の後、高齢などが原因で免疫力が落ちている場合には血中に入った歯周病菌が心臓の内側の膜に感染して心臓の働きが悪くなることがあります。重度の歯周病の方ほど細菌の数が増えるため、発症のリスクが高くなるのです。

 ○誤嚥性肺炎
 誤嚥とは飲み込んで食道へ行くべきものが誤って気管へ入ってしまうことです。誤嚥を起こした場合、口の中の細菌も一緒に気管に入ってしまい、肺炎を起こすのです。したがって、歯周病で口の中の細菌が多いほどより肺炎を起こしやすくなります。誤嚥性肺炎は普通に日常生活を送れるような方がかかる病気ではなく、体の抵抗力が下がっている、介護を必要とするような高齢の方や寝たきりの方などがかかりやすい肺炎です。

 ○低体重児出産
 詳しい仕組みはまだ研究段階の部分も多いのですが、歯周病で炎症が起こった部分から作られる物質が、子宮の収縮を促し早産を招くことで、結果として低体重児出産につながるといわれています。妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児出産は8.5倍になるといわれています。  
 一般に妊娠すると歯肉炎に罹り易くなるといわれています。これには女性ホルモンが大きく関係しているといわれており、特にエストロゲンという女性ホルモンが特定の歯周病菌の増殖を促し、プロゲステロンというホルモンは炎症のもとであるプロスタグランジンを刺激します。これらのホルモンは妊娠終期には月経時の10~30倍になるといわれており、このため妊娠性歯肉炎が起こりやすくなるのです。油断すると歯肉炎が進行して本格的な歯周病になってしまいます。ただ、歯垢が存在しない清潔な口の中では起こらないか、起こっても軽度で済みますので、普段の口腔ケアに留意しましょう。

 このように歯周病が全身に多くの影響を与えることが、昨今の研究で明らかになってきています。毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、歯周病を予防することが、全身の生活習慣病を予防することにもつながります。