被災と誤嚥性肺炎について

令和6年2月12日(月) 掲載

被災時では、お口の中をきれいにしたくてもできないストレスは大きく、とくに口臭が気になる人が多いそうです。 震災で生き延びたにもかかわらず、その後の避難生活で体調を崩して亡くなる高齢者の方もあります。その原因の1つにお口の衛生状態の悪化することでおきる誤嚥性肺炎があります。 被災地に派遣された多くの医療関係者が「災害時のお口のケアは命を守るケアである」と認識し、誤嚥性肺炎による災害関連死を減少させる活動を進めています。そこで今回は誤嚥性肺炎についてお話します。
 誤嚥性肺炎は、食べ物やだ液などが、食道ではなく誤って気道に入り、だ液に含まれる口の中の細菌が肺に流れ込んで炎症を起こして発症します。 若い時は反射的にむせたりして食べ物などを気道からだすことができますが、ご高齢者のなかにはその反射がおこらないことがあります。
 誤嚥性肺炎の原因菌には歯周病菌が多く、歯周病の方は、病原性の高い菌の種類と量が多いため、誤嚥した際に炎症を起こしやすくなります。 歯周病は、痛みなく進行するため、自分では気づきにくい病気です。また、誤嚥性肺炎はお口の機能が弱りがちな高齢者に多いのですが、一度の誤嚥で発症するのではなく、 誤嚥を何度か繰り返した後に発症します。
 災害時は、断水などで歯みがきの頻度が減ることで細菌が増えやすい状態にあります。食べ物や睡眠が不足して体力が弱まると、お口の機能も弱り、増加した細菌を誤嚥しやすくなります。 そのため、歯周病患者で普段から誤嚥を繰り返しているご高齢者方ほどリスクが高くなります。 災害時に誤嚥性肺炎にかからないためには、平常時からお口の中を清潔に保ち、お口の不具合を感じなくても定期的に歯科医院で歯周病の有無を診てもらうことが重要です。 加齢とともに外出や人に会って話をする機会が減ることがあると足腰だけでなくお口まわりの筋肉も弱りがちで、ますます誤嚥しやすい環境となります。 震災だけなく近年、台風や集中豪雨が大型化し、災害発生の頻度も高まっています。ぜひ、普段からお口の健康を大事にしてください。 歯周病と誤嚥性肺炎についてご不明な点がありましたらかかりつけの歯科にご相談ください。