歯のQ&A

平成26年11月27日(木) 東日新聞掲載

先日、歯科医院で、歯科衛生士の方より「日本人の死亡原因の第3位が肺炎になったんですよ。しっかり口腔ケアすれば、それを防ぐことにもなるんですよ。」と言われました。それって本当ですか。
(60代男性女性、主婦=豊橋市)

[回答者]
豊橋市歯科医師会 山本隆司
 平成23年度の人口動態統計調査により日本人の死亡原因が、第1位悪性新生物、第2位心疾患、第3位肺炎となりました。そして、今も肺炎で亡くなる方が、年々増加しています。
 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、口の中や咽頭部に付着している細菌が、気道に入ることで発症します。健康な人であれば、たとえ細菌が気道に入り込んだとしても繊毛運動による体外への排除や、免疫機能によって活動が抑制されるため肺炎にまでは至りません。しかし、高齢者やセルフケアができない方の場合は摂食障害(うまく食べ物を口に取り込めない)や嚥下障害(うまくゴクンと飲み込めない)により誤嚥を引き起こします。  
 また、不顕性誤嚥(ふけんせいごえん:睡眠中などに唾液とともに細菌が気道に入る誤嚥)での発症も多いことがわかっています。誤嚥性肺炎の既往歴のある高齢者では、治癒後も嚥下反射(ゴクンの飲み込むときの反射)が低下するため、誤嚥のリスクが一層高まり、抗菌薬を主とした薬物療法だけでは根本的な対策にならないと考えられています。  
 誤嚥性肺炎の発症率は年齢とともに増加し致死率も高くなり、死亡者のうち90%が65歳以上の高齢者といわれています。  
 これらの主な特徴は、若年者の肺炎は感染などの外因性によるものが多いのに比べ、高齢者の肺炎の多くは内因性によるもの(口の中に元々いる細菌が原因の肺炎)が多いことです。つまり、誤嚥性肺炎の予防法としては、内因性の原因除去(口の中や歯、入れ歯を清潔に保つことなど)に主眼を置くことが必要とされ、口腔ケアはその有効な方法となり得ます。
 口腔ケアを実施することにより、老人性肺炎の死亡率を半減することができるという研究発表もされ、口腔ケアによる予防の有効性が明らかになっております。
 以上のことを踏まえて、歯科衛生士さんに定期的に口腔ケアしてもらう事は、健康で長生きできる秘訣だと思われます。
 皆さんも定期的に歯科医院に行き歯科衛生士さんに診てもらっては如何でしょうか。

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