歯のQ&A

令和元年9月8日(日) 東日新聞掲載

口の中に渇きを感じます。食事もしにくい気がします。水やお茶を飲んだり気をつけていますがすぐカパカパしてしまいます。どうしたら良いでしょうか?
(60代女性・主婦)

[回答者]
豊橋市歯科医師会・門園誠
 慢性的に唾液の分泌が少なく、口の中が乾く症状をドライマウス(口腔乾燥症)といいます。ドライマウスの原因は、生理的なもの、病気によるものなど多くの要因が考えられます。加齢や緊張、ストレスなどによって唾液の分泌が減少するほか、全身性の自己免疫疾患であるシェーグレン症候群、唾液腺炎、唾液腺腫瘍など病気の症状として起こることもあります。また、抗がん剤や放射線によるがんの治療や、薬剤(向精神薬・利尿薬・カルシウム拮抗薬など)の副作用によって口の中が乾きやすくなることもあります。
 原因が明らかな場合は、原因に応じた対応を医師と相談することに加え、口の中の清潔と保湿を心がけましょう。ただし、水を飲んでもドライマウスは治りません。うがいや飲水により、一時的に口の中がうるおうことはありますが、脱水症状の場合を除いて、唾液の分泌を増加させることにはなりません。逆に、高齢者では、水の飲みすぎによって心臓に負担がかかることがあるため、注意が必要です。
 口の中が乾く場合は、口腔保湿剤を使うといいでしょう。液状(スプレータイプ)やジェル状のものなどがあるため、歯科医師と相談し使いやすいものを選びましょう。また、唾液の分泌を促進するために、唾液腺マッサージ、舌体操も効果があります。シェーグレン症候群や放射線治療による場合は、内服薬が有効な場合があるため、担当内科医外科医に相談しましょう。  
 ドライマウスは、直接生命に関わるわけではないので軽視されがちですが、唾液の量が減ることで摂食(食べること)や嚥下(飲み込むこと)機能が悪くなり、誤嚥や窒息や肺炎などを引き起こすこともあります。また抗菌自浄作用を持った唾液が減少すると口臭が強くなり、虫歯や歯周病になりやすくなります。気になる方は、かかりつけの病院、歯科医院に相談してみてください。