歯のQ&A

令和2年4月24日(月) 東日新聞掲載

歯医者でレントゲン写真を撮ってもらったら「子供の歯の下に大人の歯がない」と言われました。今後どのようなことに気をつけたら良いでしょうか?もしその子供の歯が抜けてしまった場合はどうするのでしょうか?
(10代男性 学生)

[回答者]
豊橋市歯科医師会副会長・鈴木研二
 生えて来るべき永久歯がないことを「先天性欠如」と言います。遺伝や妊娠中の栄養欠如、全身疾患、薬物の副作用などが考えられていますが、因果関係ははっきりしていません。したがって予防することは出来ないのが現状です。
 先天性欠如歯の割合は、約10人に1人、1本~数本の永久歯の先天性欠如が認められます。第三大臼歯(親しらず)は対象となっていませんので、最も多いと考えられる親しらずの先天性欠如を含めると、永久歯の先天性欠如30~40%にのぼると言われています。
 どの歯に先天性欠如を認めやすいかは、上顎(約4・37%)より下顎(約7・58%)と発生頻度が高く、部位的には左右共に第二小臼歯(5番)と側切歯(2番)に多く認められます。
 一般的に永久歯への生え変わりは、歯肉の中で永久歯が十分に育って萌出を始めると、その上にある乳歯の根が吸収されて短くなり、やがて抜け落ちます。これが歯の生え変わりのメカニズムですが、永久歯が育っていないと乳歯の根は吸収されませんので、大人になっても永久歯が生えるべき場所に乳歯が残ったままになります。永久歯が欠如している場合は、乳歯を出来るだけ長く残すようにします。個人差がありますが、20代~30代まで乳歯が残っているケースもあります。
 しかし乳歯は永久歯と比べて根が浅く、また虫歯になりやすいなど歯質自体も永久歯より弱いため、永久歯の代わりに一生ずっと残すことは非常に難しいと考えてください。先天性欠如部位から乳歯が抜けてしまうと、一般の欠損歯と同じ状態になります。歯が失われたままの状態が長く続くと両隣の歯が欠如部分に向かって倒れて来たり、欠如部分と向かい合う歯が伸びて来たりして歯並びやかみ合わせが悪くなります。乳歯を失った場合は早めに欠損治療を受けられることをおすすめします。
 乳歯が抜けた後の治療方法ですが、一般的に悪くなったかみ合わせを治療する矯正治療や、欠如した歯を回復する欠損補綴治療が必要となります。
 まずはかかりつけの歯科医院で現在の乳歯の状態を調べて、今後の対応についてご相談されることをお勧めします。