歯のQ&A

令和3年8月29日(日) 東日新聞掲載

認知症と歯周病には関係があると聞きましたが本当ですか?
(50代女性)

[回答者]
豊橋市歯科医師会・加藤武伯
 はい、本当です。
歯周病は、50歳以上の約80%がかかっている疾患です。最近の研究で認知症とも関わっている事が分かってきています。
 認知症の約7割がアルツハイマー型認知症です。今回は、このアルツハイマー型認知症と歯周病について説明させて頂きます。
 アルツハイマー型認知症の原因は、「アミロイドβ(ベータ)」という異常たんぱく質が蓄積することで発症します。「アミロイドβ」により、脳神経細胞の減少や脳の萎縮が起こります。 また、「老人斑」というシミが脳にできたりもします。
 この「老人斑」の周囲から歯周病の原因菌であるP.ginginvalis(ポルフィロモナス.ジンジバリス)が検出されていました。
 そこで九州大学らの研究チームは、マウス内部に3週間、歯周病菌を投与し感染させ、正常なマウスと比較しました。 その結果、歯周病菌に感染したマウスの脳血管の表面では、「アミロイドβ」を脳内に運ぶ受容体と呼ばれるたんぱく質が約2倍に増え、脳細胞への「アミロイドβ」の蓄積量も10倍に増えたと発表しました。 そして、記憶力試験により、歯周病菌に感染したマウスの記憶力の低下が認められたそうです。
 歯周病は、静かに進行していく疾患です。日々の歯磨きをしっかり行い、また定期的にかかりつけの歯科医院でメンテナンスをしてもらい認知症を予防しましょう。  
 しっかり嚙(か)む事は、脳の血流量を増し活性化させて認知症を予防します。また、記憶力をつかさどる海馬も刺激し記憶力の低下を防ぎますので、しっかり嚙む事 は大切です。1本でも多くの歯を残し、またその歯が歯周病にならないようにメンテナンスをしていきましょう。