歯のQ&A

令和4年7月17日(日) 東日新聞掲載

私は暑い日に熱中症予防としてスポーツドリンクをよく飲んでいます。そのことを歯科衛生士の友人に話したら、飲みすぎると歯によくないと言われました。本当ですか?
(10代女性)

[回答者]
豊橋市歯科医師会・小野勇太
 暑い日に熱中症予防のために、こまめに水分補給するという知識はかなり一般的に浸透していると思います。
 水分補給には、ただの水よりも塩分や栄養分を含むスポーツドリンクのほうが体に吸収されやすく良いのですが、飲み方によってはムシ歯を引き起こしやすくなるので注意が必要です。
 ムシ歯はプラーク(歯垢)の中のムシ歯菌が糖分を摂取し酸を作って歯を溶かすことで起こります。スポーツドリンクにはペットボトル1本(500㍉㍑)あたり30~60㌘(角砂糖10~15個ぐらい)の砂糖が含まれていますので、スポーツドリンクを飲むとムシ歯菌が活発に動き酸を作ります。
 また、スポーツドリンクはクエン酸やアミノ酸が含まれているため強い酸性の食品に分類されています。pHは約3・5で、歯が溶け始めるpH5・5を大きく上回っています。スポーツドリンクに含まれる酸が歯の表面の硬いエナメル質を溶かし薄くしてしまうと、ムシ歯に対する防御が弱くなってしまいます。この状態でスポーツドリンクに含まれる砂糖をムシ歯菌が食べ、酸を出すとムシ歯を作ってしまうダブルパンチの危険性があります。
 こんなお話をするとスポーツドリンクはまるで良くないもののようですが、決してそうではありません。各メーカーが時間と多額の開発費をかけて作った優れた飲み物です。スポーツ中にムシ歯が怖いからと水やお茶だけ飲んでいると、電解質不足になり頭がボーっとして痙攣(けいれん)を起こしてしまうことさえあるのです。  過度な運動をしたとき、極端に汗をかいたときなどにはスポーツドリンクは非常に有効です。その時には飲むごとに一口水を飲む、口をすすぐなど行っていただけるとムシ歯対策にもなると思います。
 普段の水分補給をスポーツドリンクで行うことは大変危険でムシ歯がとてもできやすいです。特に寝る前や寝ながらスポーツドリンクを飲む方はムシ歯リスクが高いです。健康な方であれば、水分補給は水やお茶をメインに考えていただくと良いと思います。