歯のQ&A

令和4年11月3日(木) 東日新聞掲載

お口の中を良い状態に保つのに唾液(だえき)が重要な役割をしていると聞きました。わかりやすく説明してくれませんか?
(40代女性)

[回答者]
豊橋歯科医師会・西村逸郎
 おっしゃる通り、唾液はお口の中の状態を健康に保つためにとても重要な役割をいくつも持っています。唾液の役割として代表的なものは、お口の中の細菌の殺菌、成長を抑制する機能(抗菌作用)、 食事をすることによって低下したお口の中のpHを中性に戻す作用(緩衝能)、食べた物を溶かし食べかすなどを洗い流す作用(自浄作用)などが挙げられます。 そのほかにも虫歯菌が作り出す酸から歯の表面を守ったり(歯質保護作用)、また酸によって溶けてしまった歯を再石灰化させる作用(再石灰化作用)もあります。
 唾液はこれらの作用を持ち、お口の中を守るために欠かせない存在ですが、唾液の分泌が減少することによって虫歯や歯周病以外にも、口臭の原因となったり、 発音や食べ物を飲み込みづらくなるなど日常生活にも支障を来す場合もあります。
 唾液の分泌が減少してしまう原因は、口呼吸によるもの、糖尿病や高血圧などの治療薬の副作用、喫煙、ストレス、シェーグレン症候群を代表する全身疾患など様々です。 食事を規則正しく摂(と)りしっかりと噛(か)む習慣と、お口の乾燥対策をすることにより唾液分泌の減少予防につながりますが、高血圧などの疾患がある場合にはそれらの治療薬が必要です。 原因を取り除くことが難しい場合は、対処療法として保湿ジェルや人工唾液を用いる場合もあります。
 もしご自身で唾液分泌の減少や口腔乾燥があると思われるようであれば、一度歯科医院で相談されることをお勧め致します。