歯のQ&A

令和5年10月26日(木) 東日新聞掲載

最近腰痛がひどいので整形外科を受診したら骨粗しょう症と診断されました。半年に一回の注射で治療することになりましたが、 担当の先生から「歯は抜かないようにね、あと歯医者さんに行ってきてね」と言われました。骨粗しょう症と歯科はなにか関係があるのですか?
(70代男性)

[回答者]
豊橋市歯科医師会・酒井 淳
 骨粗しょう症自体は歯科治療に影響しませんが、骨粗しょう症の治療で使用するある種の薬は副作用として顎骨壊死(がっこつえし)と呼ばれる病態を発生させることが知られています。
 顎骨壊死とは読んで字のごとく顎の骨の一部が死んでしまう(腐ってしまう)状態です。顎の骨が死ぬといってもイメージがわきにくいと思いますが、例えば歯を抜くと歯ぐきにぽっかり穴があきます。この穴は時間とともに歯ぐきに覆われて治癒しますが、顎骨壊死になると抜いた部分の骨が腐ってしまい、穴がずっと閉じずいつまでたっても治らない…というと少しイメージしやすいでしょうか。
 この顎骨壊死は抜歯をきっかけとして発生することが多いとされていますので、整形外科の先生から「歯は抜かないように」とお話があったのだと思います。一方で歯の根に膿(うみ)がたまる、ひどい歯周病など、顎の骨に炎症が及ぶような状態も顎骨壊死を発生させることが知られています。このため、骨粗しょう症の治療前には歯科医院でお口の検査を受け、抜歯や炎症をコントロールするなどの必要な治療を済ませておくことが推奨されています。
 顎骨壊死は骨粗しょう症患者さんで発生率が0・06%(約1700人に1人)とされ、必ず発生するものではありませんし、お口の炎症をコントロールすることで予防できることが明らかになってきており、必要以上に怖がる必要はありません。
 骨粗しょう症による骨折は場合によって生活機能を低下させるだけでなく、死亡率を上昇させることが知られており、しっかりした予防と治療が必要と考えられます。安心して治療を続けるためにもお口の管理を並行して行うことをお勧めします。