歯のQ&A

令和2年7月29日(水) 東日新聞掲載

数カ月前に作ってもらった入れ歯が割れてしまいました。特に硬いものを食べた記憶もありませんが。ちなみに入れ歯はどのくらいの期間もつものなのでしょうか
(60代 男性)

[回答者]
橋市歯科医師会学術部・羽田野敬彦
 先に結論から申しますと入れ歯を使われる方によって数十年持つ方もいらっしゃれば半年持たない方もいらっしゃいます。入れ歯が装着後に壊れる因子としましていくつかあります。
 ①残っているご自分の歯の上下のかみ合わせの状態。  例えば、上顎のみが総入れ歯で下顎が全部歯が残っている場合(シングルデンチャーといいます)入れ歯を入れてかんでいると入れ歯の真ん中に応力が集中するため非常に割れやすくなります。また上顎と下顎の自分の歯が数本残っているがかみ合っていない(すれ違い咬合と言います)状態があります。通常残っている歯はかむと約0・03㍉沈下しますが入れ歯の歯茎の部分(義歯床下粘膜)をかんだ時は約0・3㍉沈下すると言われております(これを被圧変異性といいます)。この場合、被圧変異性の差で鉤歯(入れ歯のバネが掛かる歯)に咬合時に強い応力がかかりこちらも鈎または鉤歯が破折しやすくなります。
 ②使われる方のかむ力および歯ぎしり、くいしばりの有無。
 通常に使用すれば壊れませんが硬い物が好きな方だと破折することがあります。この場合は熱可塑性樹脂という材質を使用して義歯を作りますとある程度入れ歯は安定します。また夜間に歯ぎしりやくいしばりがある方もよくお見かけします。このような方の場合は夜間に義歯を外していただくようにお願いします。ですが昼間の平常時もくいしばりのある方がいらっしゃいます(ご本人は気が付いていない場合が多いです)。その場合は止めるように生活指導を行います。
 ③残っている歯の虫歯のなりやすさ、口腔ケアができているか。
 当然ですが入れ歯の鈎が装着されているとその歯(鉤歯)は歯垢(しこう)が付きやすいため虫歯や歯周病になりやすい状態です。なので認知症等で口腔ケアが不十分になりますと鈎を掛けている歯が駄目になり結果的に抜歯をして入れ歯の再作成か修理になる可能性が高まります。
 ④入れ歯の材質。  一般的に健康保険適応の入れ歯ですと金属はコバルトクロム合金か金銀パラジウム合金を、合成樹脂の部分はレジンか熱可塑性樹脂を適時選択して作製します。ですが限界もあるため上記①~②の状況だと強度不足な場合があります。この場合、保険外になりますがチタン合金等違う材質を使用して作成する場合があります。またシングルデンチャーやすれ違い咬合の場合は上記の被圧変異性の改善のため入れ歯の床の沈下を抑えるため入れ歯の下の歯茎にインプラントを入れますとかなりかみ合わせが安定します。
 以上、入れ歯が壊れる原因について羅列しました。入れ歯は作製すれば調整しなくても長く使えるものではなく時々鈎や義歯床の調整が必要な場合があります。かみ合わせがおかしくなく痛みがなくても定期的に歯科医院でかみ合わせや義歯床の確認、調整を受けられ、口腔ケアをされると入れ歯および鉤歯の破折は減らすことができると思います。