歯のQ&A

令和4年8月9日(火) 東日新聞掲載

大人になってからでも歯の矯正治療は有効でしょうか。子供の矯正治療との違いはありますか?
(20代女性)

[回答者]
豊橋市歯科医師会・井野高利
子供の矯正治療と成人になってからの矯正治療との大きな違いは、子供の矯正は顎(あご)の成長期に行うことによって健全な顎の成長を助ける治療で、成人矯正はその成長が終わってから行う矯正治療です。
 成人矯正では子供にある成長という有益なメリットを使えませんが、一方、矯正治療にとって不利益な顎の成長がありません。成人では骨格の問題点がすでに表現しつくしているため歯の移動のみによる矯正治療になります。 そのため顎の大幅な拡大等は期待できないため小臼歯を抜歯して行う抜歯矯正が一般的になります。
 しかし歯並びを治すことで歯の掃除がしやすくなり歯周病の予防やムシ歯予防、また前歯の突出、すきっ歯等のコンプレックスの解消、顔貌、噛み合わせの改善も行えるため成人になってからでも非常に有効です。
 成長期の子供の矯正治療と比較して成人の矯正では以下の特色があります。
 ・歯の移動スピードに個人差があり、ばらつきが大きいようです。
 ・子供と比較し歯の動きは遅い傾向があります。
 ・歯周病も成人ではポピュラーとなりますので矯正治療に入る前に歯肉の炎症のコントロールを行う事が大事で、歯の移動中に歯を支える骨などの組織が減少することになります。
 ・歯のかぶせ物が入っている場合、歯並びが悪い状態で作られているため、矯正治療後に再治療をしなければならない場合があります。
 ・顎関節症をはじめとする顎機能に問題がある人が子供に比べて多いため、顎関節と歯の配列はより精度を必要とします。顎関節症の症状がある場合は矯正治療の前に顎の安定を図ることが、必要になる場合があります。
 ・抜歯したスペースを閉じた後、再度開きやすい傾向にあります。
 人生100年時代と言われている今、何をするにしても遅すぎるという事はありません。
 長い歯科矯正の歴史からすると、成人矯正は比較的新しい分野です。しかし道具の進歩により注意深く行えば歯や歯周組織に少ないダメージで歯の移動が可能となりました。 また装置も洗練され治療の可能性が大きく広がり、昔の装置に比べ痛みもかなり減りました。 しかし、歯の移動が遅く予想した治療期間で終わらず困惑するときもありますので、患者さんと歯科医師との信頼関係が重要となると思います。 まずはかかりつけの歯科医院での相談から始めてみてはいかがでしょうか。